神さま
私という耳かきに
海を
一度だけ掬わせてくださいまして
ありがとうございました
海
きれいでした
この一滴の
夕焼けを
だいじにだいじに
お届けにまいります
「臨終」 まどみちお
彼は、きっと、今。
燃えるような真っ赤な夕焼けの、その先を。
果てしなく暗い宇宙の、またたく星にむけて。
ゆっくりゆっくりと歩んでいるころ。
まどさん、ありがとう。
きっと平坦ではなかっただろう、長い長い、人生の旅路。
おつかれさまでした。
わたしはあなたのおかげで
世界がわたしを必要としてくれることを、信じられたのです。