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昔ながらの自然塗料で、古町家を手入れする②

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自然塗料での手入れ方法、
まずはべんがら(弁柄)の塗り方から。


べんがらのことは、町家の工務店さんから話に聞いていたものの、
「お寺や神社に塗ってあるやつ」ぐらいの意識しかなく。

最初は「ペンキとどう違うの?どうやって塗るの?」という
超基本的なところすら知りませんでした。

大工さんの仕事が終わりに近づいてきたとき、
いざ塗ろう!となって調べてみても本などもあまり出ておらず、
ネットの情報がちらほら見つかったぐらい。

正確な分量なども決まっていないようで、
人によってやりかたもさまざま^^;

すこしずつ人に聞いたり、youtubeで動画を探し出したりして見た結果、
ひとつの結論に至りました。

「どうやら、適当でいいらしい」

ということに(笑)

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無添加住宅さんのHPより画像お借りしました。


べんがらというのはそもそも、
酸化鉄の鉱石を原料とした無機顔料のこと。

主成分が酸化鉄なので成分が安定していて、
ペンキなどとちがって溶剤をふくまないため、
施工中も施工後もシックハウスの原因にならず安心です。

塗料としての使い方は、柿渋と混ぜるだけ。

塗り方としては
「はけで塗り」→「すりこむ」→「1日以上乾かす」→
「荏油や桐油などの乾性油をぬってコーティングする」→「乾かす(3日~1週間)」
という方法が主流らしい。

ネットを見ていると柿渋を原液のまま混ぜている方、薄めて混ぜている方、
水だけで塗っている方、と色々いらっしゃいましたが、
我が家では多数派(ような気がした)だった柿渋と水半々に
べんがらを溶かし込む方法でやってみました。

どれぐらいの量が必要かわからなかったのですが、
べんがらを買いにいった山中油店さんから
「べんがら一袋あったら壁一面塗れますよ~」という情報を聞き、
とりあえず250g入りを購入。

柱10本ほどと二階の手すり、玄関の枠、
窓枠すべてを塗ることができました。


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山中さんには赤、茶色、黒の3色置いてあったのですが、
「京都はだいたいこの茶色ですえ」とアドバイスされ、
茶色のべんがらにしました。

水と柿渋を200mlずつぐらい、計400mlのなかにべんがらを大体スプーン10杯ぐらい
(50gぐらいかな?)を溶かし込み、塗ってみました。

表現しにくいんですが、中濃ソース、といった感触でしょうか。
(とんかつソースまではいかないけど、ウスターソースほど薄くない、みたいな)


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ゴンの友達も手伝ってくれて作業中。
小さくうつっているトレイに入っている赤色のものが柿渋に溶かしたべんがらです。

表面にこんなふうにすぐに酸化鉄の赤色が分離してくるのですが、
混ぜるとちゃんとこげ茶色になります。

べんがらは水に溶けると聞いたのですが、
完全にはまざらず、すぐに粘土のようなものが沈殿してきます。

お酒や豆乳などを混ぜて溶かすという情報があったけれど、
それだとうまく混ざったのかもしれません。
(今度やってみよう!)

感触としては色のついたさらっとした泥水を木に塗りつけているかんじ。

でも柿渋が混ざっているからか、乾くと少し手につくものの、
しっかりこげ茶色に。

柿渋を水でうすめたのは正解だったような気がします。
これが100%柿渋だったらねばねばして塗りにくかったとおもう。


室内は一度塗りで十分そうだったので一度塗りをして、
屋外は雨などに当たることもあり一度塗って乾かし、
2日後にもう一度重ね塗りしました。


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before写真を撮り忘れてしまったのですが、
これは下半分だけ新しく入れ替えてあり、上半分は昔のままの柱。

塗装してある部分もしてない部分も一緒に塗りましたが、
ちゃんと両方色がのりました。


これも一部補修をしてある室内の柱。


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この部分にだけ新しい弁柄を塗りました。


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ちょっと色合いが違うものの、ぱっと見わかりません!

すごいなー。

べんがらは安定した物質なので経年劣化がほとんどないらしい。
どうりで、こうして100年前のべんがらにもなじむんやなあ。



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こんなふうに、傷がついてしまった部分も・・・



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あまったべんがらを細筆でちょいちょいっと塗って乾かし、
荏油で拭いたらきれいになりました。



ここで失敗談を。

いろんなサイトに
「べんがらを塗ったらウエスで拭きあげること」と書かれていたんですよね・・・
(山中油店さんの動画でもそう言われてた)

でも、最初に塗ったときけっこうきれいにむらなく塗れたので、
「このままでいいんじゃない?」とずぼらして拭かずに仕上げてしまったのです。

そう、これが大失敗!



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乾いたときに黒い粉がぱらぱらと床に。
おそらく溶かしきれずにだまになったべんがらが乾いたときにはがれおちたもの。

最初それに気づかず床を掃き掃除してしまい、
べんがらの粉で白木の床を汚してしまいました;;




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やっちまった・・・


ずぼらせずにちゃんとウエスでふいていれば防げた事態でした。
(この後固く絞った雑巾で拭き、メラミンスポンジで磨くとある程度きれいになりました)

もしべんがらを使った塗装にチャレンジされる方がいらっしゃったら、
乾く前の「ふきあげ」はしっかり!されてくださいね~


それから、塗るための道具ですが最初なにもわからず
「ローラーがあればたくさん塗れて便利だろう」と用意していましたが、
これがまったく無駄になりました・・・

ローラーだとスポンジにべんがらがしっかり吸い込まれてしまい、
回すたびに飛び散って回りも汚れるし、木にすりつけづらい。
はけとウエスだけで十分でした。


また、べんがらを塗ったあとの荏油塗りですが、
お天気も悪かったからか、予想以上に乾くのに時間がかかりました。

ネットなどでは大体3日ほどで乾くとありましたが、
場所によっては1週間ほどかかったし、こするとまだ手につく場所もあります。

塗る油の量なども関係しているのかもしれません。
今度また違う場所で条件を変えてやってみてレポしますね~




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こうしてべんがらとむきあってみると、
なぜ文献などが少ないのかちょっとわかった気がしました。

べんがらや柿渋はほぼ天然素材に近いものなので、
たぶんいろんな状態のものがあるし、気候や使う環境によってどう仕上がるか
千差万別なんじゃないかと思うんです。

だとしたら、必要なのは「情報」ではなく、
手の感触やにおいみたいな「勘」に頼るところが大きいのかもしれない。

きっとそれは職人さんが目の前でやって見せて、
手取り足取り後輩に教え、伝えてきた、まさに「文化」のようなもの。

便利で簡単な塗料塗りが主流になっているけど・・・
これからもべんがら塗りが伝わっていくといいな、と思いました。



では次は、柿渋の塗装についてお話しますね。











by fu-ko-handmade | 2019-06-20 11:00 | リノベーション

手づくり暮らし研究家、FU-KOこと美濃羽まゆみのblogです。京都の古い町家から「ものを作る、幸せのかたちを作る」をテーマに、手づくりのある暮らしを提案します。


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